【質 問】
出産間もなく手のひらに水泡が出来、いずれ治るだろうと放置していました。それが幾重にも重なり、やがて膿を持ち、皮膚もだんだん硬くなって足の裏にも出来るようになりました。皮膚科に行くと、これは掌蹠(しょうせき)膿疱症で、根気よく治療しましょうといわれました。軟こうと抗生物質を処方してもらい、最初はきれいになり喜んでおりました。ところが再発と緩解を繰り返しながら早1年が過ぎ、今年で娘も3歳になり、私も28歳になりました。良い漢方薬を処方してください。
【答 え】
掌蹠膿疱症は、歯や扁桃炎などの病巣感染、歯科金属のアレルギーなどが原因と考えられています。人によって時間がかかる場合もありますが、この女性も1ヶ月月の服用でつるつるの皮膚がよみがえりました。
患部は淡紅色を呈し、火照っている。これを取り去るには「知柏地黄丸・ちばくぢおうがん」がよいでしょう。患部が真っ赤で火照りがびどい場合は「三物黄芩湯・さんもつおうごんとう」を使います。水泡は水分代謝の異常が起きているためです。膿を持つということは患部に熱状があるためで、これらには「龍胆瀉肝湯・りゅうたんしゃかんとう」がよいでしょう。熱がなければ「五苓散・ごれいさん」、熱が激しい場合は「黄連解毒湯・おうれんげどくとう」を使用します。
【質 問】
今年の夏は暑くなるのが遅く、冷房も余りかけていないのですが、だるくてしょうがありません。病院で検査をしましたが異常ありませんでした。いまの季節と関係があるのでしょうか。 【答 え】 雨の日が多い今年は、じめじめとうっとうしさが続きました。低気圧が近づくと頭が重く、体がだるくなる。気分が憂うつで、身体の動きが鈍い。古傷が痛み、腰痛神経痛が悪化する。この時期の天候は身体にどのように影響するのであろうか。 漢方では「湿邪」「痰(たん)飲」という概念がある。湿邪とは体外の湿気をいい、急性に発症するものに胃腸炎がある。嘔吐や胃の痛み、下痢、だるさなどが特徴である。代表的な処方は「藿香正気散・かっこうしょきさん」で、胃腸に入った湿邪を取り除く効果がある。また「苓姜朮甘湯・りょうきょうじゅつかんとう」という処方は座骨神経痛に用いることが最も多い。特徴は腰から下の重苦しさを伴う痛みである。これも湿邪のいたずらである。 痰飲とは、体内の余った水分を指す。日常の疲れで膵臓が活力を失い、必要以上に水分が溜まった病症をいう。身体全体が重だるく食欲がいまいちで、そうめんやそばが多くなる。このような方は「香砂六君子湯・こうしゃりっくんしとう」や「参苓白朮散・じりょうびゃくじゅつさん」などを服用する。 |
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更新日: 2011/05/07 |
【質 問】
35歳になる女性です。20年前から貧血でしたが、8年前に咽喉(のど)のつまりを感じ始めました。4、5年前より、めまい、ふらつき、動悸(き)息切れを感じて病院に行き、橋本病と診断されました。ほかで「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」を服用していましたが改善されず、何とかならないでしょうか。 【答 え】 橋本病とは、甲状腺に自己免疫疾患が起こった病気で、慢性甲状腺(せん)炎といいます。ホルモンの分泌が低下すると、朝起きられない。やっと起きてもだるくて動けない。寒がりになり、皮膚がかさつく。さらに低下すると手足と顔がむくみ、日常生活がのろくなる。1日中ぼんやりしていることが多くなり、ひどい場合は昏睡に陥るという病気である。 この女性の場合は、肝臓の指標も高くなっていた。全身の黄色みがひどく、手と足にしびれを感じる。これは、血液がかなり薄くなっていることを表す。身体がうまく動かないため、いらつきやすくなっていた。 腎臓の陽気を増し、水分代謝を促進する「真武湯(しんぶとう)」と、血液の統率をする力を増す「帰脾湯(きひとう)」を服用していただいた。2週間もしないうちにむくみが消え、咽喉のつまり感もなくなり、見違えるように元気になったと、現在も服用を継続中です。 |
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更新日: 2011/05/06 |
【質 問】
39歳の女性です。数カ月前から残業が多くストレスがたまり、普段は5時間くらいの睡眠が3、4時間ほどになってしまいました。イライラが募り、カラオケでストレスを発散させていたつもりですが、次第に顔がかさつき、ニキビが出始めました。良い漢方薬はないでしょうか。 【答 え】 鼻から下が全体にかさつき、淡紅色から赤色の大きなニキビがいくつも出ていた。体は疲れているが寝付くのに1時間ほどかかる。便通も悪くウサギのフンのようにコロコロした便が出る。 不眠と皮膚がかさつく症状は、血の不足を意味している。手足と顔に火照りがあり、ニキビの化膿はわずかで淡紅色が多いのは「陰虚」の現れである。寝不足と残業で気の不足を起こしたため、腸の働きに異常を来し、便が兎糞(とふん)状になっている。 彼女には「双和湯(そうわとう)」を1カ月間服用してもらった。服用から1週間後、顔がつるつるになりニキビも治まりましたと喜びの電話があった。 「双和湯」には、気と陰分を補う「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」と、血を補う「四物湯(しもつとう)」が入っている。このように著効を示す場合もあるが、ほとんどのニキビはホルモンの乱れが関与しており2、3カ月で効果が分かり、半年くらいで良くなるケースが多い。 |
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更新日: 2011/05/05 |
【質 問】
55歳の女性です。仕事のほかに母の看病で大変忙しく、今年に入って風邪を引きました。治った途端、2月の氷雨の降る夕方バス停で、でん部の左側からひざの後ろにかけてピリッと痛みが走りました。忙しい毎日が続いて1カ月後激痛になり、腰が曲がってひざをまっすぐ伸ばせなくなりました。左ひざの側面から足首にかけてびりびり痛み、足裏もはれて痛みます。このまま歩けなくなってしまうのでしょうか。 【答 え】 左足全体が冷たく、重苦しさをいつも感じて夜間に痛みで起きてしまう。寝起きに痛く、しばらくすると楽になり少しは動けるようになる。夕方に再び痛みで動けなくなる。風呂に入ると楽になるが出た途端、痛みがぶり返す。接骨院で2時間くらい歩くようにいわれ、涙が出るほどつらかったが、足を引きずり歩いたという。 痛みは重苦しさを伴い足が冷たいことにより、バスを待っているとき経絡上に寒邪と湿邪が侵入している。夕方に症状が悪化するのは、ハードな生活を続け、さらに2時間も歩いたことで腎の活力を失い腎虚を起こしている状態である。結果、腰が曲がりひざが伸びなくなっている。 寒湿の邪を追い出すためには「苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)」を、腎に活力を与えるために「金匱腎気丸(きんきじんきがん)」を服用していただいた。 |
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更新日: 2011/05/04 |