日本には比較的はっきりとした四季(春夏秋冬)があります。
そのために”季節の変わり目”という厄介なものが存在するのです。
まあ、体調の良い人にとっては何と言うこともないのですが、個々の体質によって様々な症状を起こすことがあるようです。
20代で色白なお嬢さん、お店に入るかどうか迷っているようです。
中をのぞき込んでは行きつ戻りつを繰り返しています。
どうせ暇だし話を聞いてみるかと、店の外で「どうかしたのか」と声をかけます。
「あ、あの、私、死にそうなんです!」
まあまあ、そんな話は外ではちょっと。何ならお入りなさいと誘うや否や、あれこれ訴えてきます。
一生懸命説明しているようなのですが、何せ慌てていますので聞き出すのにも一苦労です。
とは言え、死にそうといっても元気そうだし、顔色も良いし、変な声が聞こえている訳でもなさそうです。
実は、季節の変わり目にはこういう人が意外に多いのです。”死にそうな人”も時々来られます。
訴えとしては「突然の動悸があり、死ぬかも知れないと思い、次になったらどうしようと不安で仕方ない」という事です。
取りあえず、気を失ったり倒れたことは無いこと(心・循環器系の疾患では無さそう)、呼吸困難や手足のしびれなどが無いこと(過換気症候群も無さそう)を確認しました。
これはいわゆる”パニック発作”というもので、軽い症状から重症のものまで合わせると人口の10%程度に起こります。
10~20代の女性に多く(男性の3倍)、中には過換気症候群(上記”呼吸困難や手足のしびれ”)を併発する場合もあります。
パニック発作と過換気症候群が同時に起こったものを漢方では”奔豚(ほんとん)”と呼んでおり、個々の症状に合わせた薬方があるのです。
このお嬢さんの”奔豚”は暑さと就活による心身両面へのストレスが原因だったのでしょう。そこら辺りを考慮しつつ幾つかの薬方を差し上げて回復しました。
ことしの夏は暑かったです。これもある意味”夏バテ”なのかも知れませんね。
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更新日: 2013/09/24 |
63歳、男性、以前から時~々ふらっと来店しては健康相談(と言っても“雑談”ですが)をされる方です。
常に緊張が強く、眉間には深いしわがあります。 顔色は赤味があり目線が定まらない感じです。 内心「また心配なことがあるのかなあ」とこちらも身構えてお話を聞いたところ来月退職するとのこと。 「やっと辞められる。人間関係が大変だった。」 ははあ、なるほど、そうでしたか。 「まあ、子供たちも何とかなったし、後はかみさんとのんびりしようと思っている。」と言います。 でも「のんびりする」と言う割には相変わらず緊張感は強いし、赤ら顔で眉間のしわも消えてはいないのです。 何故かなあと思っていると 「俺はずうっと20年間も“神経症”の薬を飲んでいるんだけど、止めても良いのかなあ? 医者に聞いたらだんだん減らしていけば、って言われたんだけど・・・」 そこで何をどの位飲んでいるのか尋ねてみたところ、抗うつ剤と抗不安剤、睡眠薬(いずれも最低量)が出されており、さらに本人が言うには「最近は調子が良い時は抜いていた」との事です。 まあ、主治医も中止を勧めている訳ですので「せっかく仕事のストレスも無くなる事だし、薬いらないでしょう。辞めてみれば?」とアドバイス。 すると「でも眠れなかったら?」と迫って来ましたので「起きていれば。次の日は仕事に行かなくても良いのでしょう?」と返します。 他にもあれやこれやと「でもでも、だって」の大行進。 こういう方の症状は“予期不安(先に考えすぎて不安になる)”が強いことですので、理詰めで行くより「まあ何とかなりますよ」的な対応が必要です。 この方も小1時間お話され、最後には一応「そうだよね。」と納得され、証を確認し漢方薬を1週間分お出ししましたが、多分来週も眉間にしわを寄せて赤ら顔で来店されるでしょう。 しかしまあ、そのうち何とかなりそうです。 |
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更新日: 2013/09/19 |
2020年東京オリンピック開催が決定しました。
今、中学生や高校生の皆さんが、7年後の中心選手になるのです。みんな一生懸命頑張ってね。 それは良いとして、最近ニュースなどで見かける「ドーピング」はスポーツの本質を壊しかねない問題です。 私たち薬剤師は”街の科学者”ですので、やはり無関心ではいられません。 以前は興奮剤とか筋肉増強剤などが主流でしたが、最近はより巧妙に見つけられ難い薬物や技術が使われているようです。 ただし、これらの”確信犯”的ドーピング違反者についてはWADA(世界アンチドーピング機構)が常に監視を強化しています。 問題は私たちが日常使っている医薬品・サプリメントなどによる「うっかりドーピング」なのです。 胃腸薬の一部、風邪薬・咳止め・鼻炎薬、滋養強壮剤・精力増強剤の一部の他、漢方薬にも注意が必要です。 また、サプリメントは”食品”に含まれますので成分の表示義務が無く、知らないうちに違反物質を摂取する可能性があります。 例えば、おなじみの”葛根湯”も麻黄(マオウ)という薬草が入っているためドーピングに違反する薬物になります。 これは麻黄の成分であるエフェドリンが原因です。 従って、麻黄が含まれる他の漢方薬もドーピングの対象薬物になるのです。 ただし、これはスポーツをする(競技会・大会に出る)時に注意すれば良いのであって、普通に生活している時には何の問題もなく使って構いません。 さあ、暑い夏も終わりスポーツの秋になりました。 美味しくご飯を食べて、良く運動して、少~し勉強して、たっぷり睡眠を取りましょう。 |
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更新日: 2013/09/10 |
今年の夏は大変でしたね。
私は時々、地域の急病診療所のお手伝いに行くのですが、特に日曜日の夜は熱中症(脱水?)らしき子供たちが多かったですね。 夕方からぐったりして、突然吐いて、熱が出たり頭痛が起きる~だいたいこんなパターンです。 症状が重たければ点滴をしたりしますが、大抵は吐き気止め、整腸剤、熱さましが出ていました。 漢方薬だと五苓散とか生脈散あたりかなあ、などと思いながらお話をしていました。 要は「脾・胃(消化吸収)」の機能が弱り切ったために「肺」から送られるべき水分が不足して身体の熱が下げられないのです。 治療として、できるだけ速やかに水分の不足を補う必要がありますが、「脾・胃」の機能低下がベースにありますので一度に大量の水分を飲ませるとまた吐いてしまいます。 ママは頑張って診察を終えた子供にご褒美のジュースを買ってあげるのですが、吐き気が止まるまで飲むのは我慢してもらいます。 子供たちは「えっ?!なんで?」とうらめしそうな顔をしますが、しかたないんだよ~お。 さて、それでは”この夏の子供たち”です。 症例①喘息の体質改善のために黄耆建中湯を飲んでいるE君、夏休みに入るや否や入院退院を繰り返してしまいます。家族も本人も疲れ果てて相談に。「疲労困憊」「心煩」とみて柴胡桂枝乾姜湯を差し上げたところ、咳も止まり体調も楽になりました。 症例②ひどいアセモになったMちゃん、皮膚科に行ったら「何だアセモじゃないか、清潔にしなさい」と叱られた新米ママはしょんぼりしています。 まあ、昔からやってる「沐浴」をすれば良いのですが、そこでひと手間、”桃の葉”を差し上げました。 薬缶に桃の葉を一掴み、水をいれて沸かします。沸騰してから5分間くらいしたら茶こしでカスを取ってたらい(ベビー用バス)に入れ、水を足してぬるま湯を作ります。後はぱちゃぱちゃ遊ぶだけ。ただれた処には紫雲膏を付けてもらいました。 症例③「夜、何度もトイレに起きるのよ」とはNさん。え!?そんなの初めて聞いたよ。「違うのよ、久しぶりに孫が泊りにきたんだけどね、その子が・・・」との事。 Eちゃん8歳、普段から神経質な子のようなので桂枝加竜骨牡蠣湯を差し上げました。その日の夜からぐっすり眠れたそうです。 症例④Aちゃん18歳、もう子供とは言えませんが・・・、小さい頃から来ているのでね、ついでです。 耳たぶがかぶれてジクジクしていて、どうやらアクセサリーによる炎症のようです。外用剤は皮膚科で貰っていましたので荊防敗毒散を差し上げました。 これ金属アレルギーかも知れないよ、と私。「え~、もう指輪もネックレスも駄目なのお?」 いやいや、純金とかだったら大丈夫だよ。もう仕事しているんだから貯金して買いな。「うん!カレシに買ってもらう」 え~?!カレシぃ?・・・そうか、もう18歳だものねえ。こちらも年を取ったって事か。 |
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更新日: 2013/09/04 |
先日、約5年ぶりに来店したK君。
大きな理容室のNo、2です。 どうしたのかと聞けば「カット中に手首(甲側)が痛くなる」とのこと。 「おそらく手首の腱(尺側および橈側手根伸筋)の使い過ぎによる痛みでしょう」と伝え、簡単に自分でできる”お灸”を勧めました。使い過ぎによる関節などの痛みには意外に良く効くのです。 K君がうちに初めて来たのは10年前。 理容師の修行を始めたばかりで、両手の指がボロボロに荒れていて、まるで「崩れた明太子」状態になっていました。 「仕事を休む訳にはいかない。何とかして下さい」と言います。言葉の感じから東北出身と思える好青年でした。 多分、パーマ液や毛染め液による炎症なのですが、炎症部位が手の甲側に集中していましたので”手洗い不良”と考え、 ①こまめに手を洗うこと ②必ずタオルで手を拭く、乾かすこと ③少しの間でもクスリを付けること ④寝る前にしっかり治療すること などの指導をし、幾つかの塗り薬で治療、数か月がかりで治りました。 まあ、クスリがどうとか言う以前に、K君自身の修行によって作業手順が出来上がったのが良かったのでしょう。 5年前、今度は「風邪では無いが咳が出る。エヘン虫が取れない」といいます。 話を聞くと「後輩を指導しなくてはいけない」「苦手なんですよね」とのこと。 なるほど、ストレスですか。ベテラン(?)になると大変だねえK君。 この時は数種類の漢方薬を使いました。しばらく時間はかかりましたが治りました。 これもK君が環境や自分の立場に慣れたんでしょうね。 そして、今回5年ぶりの来店だった訳ですが、もうK君も良い感じのおじさんです。 「カット用のハサミは自分用に作っているの?K君も10年選手なんだからいいやつ作ったら」と伝えました。 K君も私も日々研鑽を続けています。「今でも修行中」なのです。 |
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更新日: 2013/08/28 |