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舌痛症とは、文字通り「舌が痛い」という症状が主になり、全人口の0.7~3%が発症すると言われています。病院を受診しても原因が分からず、色々な治療法を試したが治らない、というケースが多く、治らないまま放置しているうちに、症状が徐々に悪化してしまうケースも少なくありません。痛みが長引くことで、精神的な不安感が強くなったり、ストレスを感じたりする人もいます。また、器質的には問題がないため、「問題なし」と片付けられ、気持ちのやり場をなくしてしまう人も中にはいます。こうした原因不明といわれる症状に対して、個人の体質を見極めた上で体を整えていく漢方薬が有効的な手となる場合もあります。

■舌痛症はどんな病気?
「国際頭痛分類第三版」の定義によると、舌痛症とは「舌自体に潰瘍や炎症などの器質的な問題はなく、連日2時間以上にわたって繰り返す痛みが3か月以上続く状態のこと」を指します。
舌の痛みを伴うものに下記に示すようなものがありますが、これらの舌に痛みを起こしうる全ての病気を除いたものを「舌痛症」とします。
舌痛を伴う病気一覧


口腔回りには三叉神経や顔面神経が広く分布していて、口の中の感覚や顔の表情を作るために、機能しています。また、口の奥の方には舌咽神経や舌下神経も広く分布しています。口腔内の痛みを引き起こす原因となるのは三叉神経や舌咽神経などですが、「舌痛症」の場合はこれらの神経による痛みを除外して診断していきます。このような神経による痛みの場合、カルバマゼピンなどの抗てんかん薬などが用いられることがあります。

■舌痛症の症状
慢性的な痛みや痺れが主な症状ですが、痛みの表現は人によって異なります。「ヒリヒリする」「カーッとした痛みがある」「ピリピリする」など、様々な表現がみられます。また、口腔内の乾燥感を伴う人もいるため「口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群)」とも言われています。痛む部位は移動することもあり、食事中は痛みを感じないという人もいます。
この様な症状がよくみられます
✓見た目には何も問題ない
✓舌がヒリヒリして、灼熱感を伴う痛みがある
✓ピリピリ感、痺れを伴う
✓口の中の乾燥感を伴い、粘つく、ザラつく
✓食事の時に特にしみるわけではなく、食事中は舌痛症であることを忘れる。


■舌痛症の原因
舌痛症のはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、更年期や心身症、食事の偏りと何らかの関係があるのではと指摘されています。
舌痛症と更年期
舌痛症は更年期以降の女性に多く見られます。男性より女性の発症率が高く、女性の有病率は男性の8~10倍とも言われていますが、特に女性ホルモンとの関係性は分かっていません。
舌痛症と心身症
舌痛症は心身症の一つとも考えられていますが、舌痛症を抱える人の多くに、元々不安感が強い傾向があります。
食事の偏り
食事の偏りによる亜鉛やビタミンB類の不足により、舌の炎症を呈している場合もあります。亜鉛やビタミンが不足しているか否かの判断は、その他症状と血液検査によって総合的に判断されます。
 
■舌痛症の治療
舌痛症はその内3%が自然治癒すると言われていますが、多くは長期化してしまいます。痛みにより生活の質が著しく下がることもありますので、適切な治療を行う必要があります。
このような原因不明の症状に対する治療は漢方薬の得意とする分野でもあります。

■舌痛症に使われる漢方薬
舌痛症には、下記のような漢方薬が使われることがありますが、いずれにせよ「この症状にはこれが効く」というものではなく、体質を伺った上で、どの処方が合うのかを判断していくことになります。

〇栄養不良と考えられる場合…十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
〇自律神経の乱れ、イライラや睡眠の質が悪いなどの症状が見られる場合…柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)
〇食欲旺盛でのぼせや血圧が高い症状も合わさっている場合…黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
〇口の中が渇く、乾燥が気になる場合…麦門冬湯(ばくもんどうとう)
これらは舌痛症によく使われる代表的なものになりますが、いずれも漢方治療では「木を見て森を見ず」の医学はありません。局所だけ見て判断するのではなく、全体的な体のバランスがどのように乱れているかを見て漢方薬を選びます。

ここで当店にいらした方で、3週間の漢方薬の服用により長い間悩まされてきた舌痛症が改善した症例をご紹介させて頂きます。

【60代女性】
舌先のひりひり感を訴えてご来局。唇や舌の裏に症状があり、食事による舌への刺激はなく、むしろ食事をしていた方が症状は和らぐ。化粧品などは今まで通りのものを使用しており特に変えていないそう。更に詳しくお話をお伺いすると、物事に集中している時は、痛みを感じず、また痛みは疲れやストレスによって悪くなることもないとのことでした。ご本人にも原因が分からず、毎日の痛みによる不快感のせいで気が滅入っている状態でした。

また、この患者さんは舌の症状以外にも次のようなことを訴えていました。
『ここ一カ月は頭鳴りがして、MRIの検査をしたが、特に異常は認められなかった。昨年家族を亡くし、現在は精神的には持ち直しているものの、やはり時々思い出しては悲しくなる。普段から眠りの質は悪く、二時間おきに目が覚めてしまう。
また、足が熱くなり、体の芯から熱くなることもある。排尿に関しては正常ですが、夜間トイレで目が覚める、また、排便に関してはコロコロとした便が出る。食欲は年齢相応で、昔に比べ、量は減っており体力も落ちた。』

腹診:小腹不仁
脈診:細沈
舌診:薄白苔 辺尖紅


このケースでは舌の痛みだけでなく、体が火照って熱がこもる体質や腹診、脈診などから総合的に判断した結果、地黄を用いた処方が良いと考えられました。そこで、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)を服用して頂いたところ、3週間ですっかり痛みを感じなくなったそうで、精神的にも落ち着き、気持ちも楽になったご様子でした。

漢方治療には、抱えている症状を改善するだけでなく、全体的に整えて体も心もバランス良くしていくことができるという大きな特徴があります。
原因不明の舌痛症に悩み、病院を数軒受診しても治らずに不安を感じている方は多くいらっしゃいます。そんな方はぜひ、漢方治療もお考え頂くと良いでしょう。

担当 田村英子先生リンク (薬剤師)

参照文献:
JSOMS. 「口腔外科相談室」. 公益社団法人日本口腔外科学会.
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/kouku/itai/リンク (参照2022-04-02)

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