養生法
東洋医学の中には古くから多くの養生法があり、すでに確立されています。養生法の目的は、体質の強化であり、人体の抵抗力(免疫力)を高めることです。そのなかで、私たち人間が地球に生かされていることが現実ですので、一番大切なことは「自然の法則に従う」ということでしょう。
日本には、有難いことに、四季があります。人はどんな理想的な家に住んでいても、自然の中で生活しているのに変わりありませんので、真夏のときの拡張する血管と体、真冬の収縮する血管と体のように、その自然界の四季の気候変化は必ず人体に影響を及ぼします。
今回は夏の養生法について考えてみましょう。
紀元前に書かれた東洋医学の医書『素問(そもん)』に書かれている養生法によると、「夏季は太陽が沈むと寝て、日の出とともに起きる。日中が長いけど怠けてはいけない。適当に運動して一日に一回汗を出すように心掛ける。気分的にも発散するような気持ちでいるとよい。もし、陽気を発散しないと熱がこもって病気になる。」と書かれています。
現代の住宅はクーラーが完備して、暑い夏といえどもあまり汗をかかないですみます。東洋医学では夏季は「心(しん)」が一番活躍していると考えます。西洋医学で言う心臓に相当しますが、体の中で一番陽気が多い臓器です。心はその陽気を発散することによって(具体的には汗をかいて)、体温調節をしています。
汗を出すことによって、体内の陽気を発散して、暑い環境と調和を取ることが必要になります。水泳などは夏季の運動としては外部から体を冷やし、汗を発散できる最適なものの一つでしょう。
陽気を発散しないと身体全体も熱く感じて、さらに冷たい飲み物を欲するようになり、悪循環になります。
これが続くと、胃腸を冷やして下痢をするようになります。冷蔵庫が普及して食べ物の腐敗が少なくなった現代でも下痢の多い原因は胃腸の冷えなのです。
惠木 弘・著 『快適な夏の過ごし方 四季の養生法』より