病気の悩みを漢方で

１．柴胡加竜骨牡蛎湯（サイコカリュウコツボレイトウ）…イライラと動悸と気うつ

　イライラ、時には気うつになる患者さんに用いる柴胡の配剤された処方の続きです。

　大柴胡湯（ダイサイコトウ）の適する人は、イライラと怒りと腹部膨満感に悩みます。自己中心的で自信過剰の人が多いようです。

柴胡加竜骨牡蛎湯の適するSRさん
（動悸、血圧変動）

　一方、柴胡加竜骨牡蛎湯はイライラと気うつが共存する人に用います。SRさんのように体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う人のイライラです。夢を見ることが多く、物音に敏感で驚きやすい人に用いられます。
　柴胡加竜骨牡蛎湯は「高血圧の随伴症状（動悸､不安､不眠）、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘」のような症状・病名に適します。
　イラストにあるように円形脱毛症にも用いる場合があります。

　日本の柴胡加竜骨牡蛎湯には10生薬を含む製剤と、大黄を加えて11生薬からなる製剤があります。 11種の中の6生薬が大柴胡湯と共通です。

大柴胡湯の適するDSさん

２．加味逍遙散（カミショウヨウサン）…イライラと多愁訴（婦人更年期障碍）

３．桂枝茯苓丸（ケイシブクリョウガン）…イライラと冷えのぼせ（婦人更年期障碍）

モモの果実

桃仁はモモの種子

　桃仁（トウニン：モモの種子）は牡丹皮（ボタンピ）とともに血の巡りをよくしてイライラなどの
愁訴を軽減すると考えられています。

４．気のめぐり（巡り、回り、運り）

　漢方医学の気は、生命力の根源です。この流れを整えることを漢方治療の基本としています。気の停滞を改善する理気（リキ）、行気（コウキ）、気の流れる方向を整える順気（ジュンキ）、降気（コウキ）、承気（ジョウキ）という治療法です。

　ここで紹介した、柴胡加竜骨牡蛎湯、大柴胡湯、加味逍遙散、桂枝茯苓丸や桃核承気湯は、「気のめぐり」を調整する処方です。
　これらは、漢方医学の診断に従って使い分けられます。そのために漢方相談の時には、イライラ以外の症状を詳しくお話ください。
　なお、イライラ緩和には、薬以外に「気分転換」も必要です。