病気の悩みを漢方で

１．通導散（ﾂｳﾄﾞｳｻﾝ）の意味･･･（気血水を）通し導く方剤

　通導散（ﾂｳﾄﾞｳｻﾝ）の通導は通し導くという薬能です。何を通導するかというと、本方には（３項に示すように）理気薬（ﾘｷﾔｸ）と活血薬（ｶｯｹﾂﾔｸ）とさらに利水薬（ﾘｽｲﾔｸ）も含まれていることから、滞った気血水（津液）を通導する方剤であることが分かります。

（⇒「ちょっと一言」も参照してください）

２．通導散の適応･･･打撲痛､頭痛､めまい､便秘､月経不順

　通導散は打撲による内出血（瘀血 ｵｹﾂ）や痛みを軽減する活血瀉下（ｶｯｹﾂｼｬｹﾞ）剤として創案されました。

　本方は、日本の一貫堂医学では､
　・のぼせ､頭痛､肥満を伴う婦人更年期障碍
　　（図１．左）や､
　・メタボ肥満､生活習慣病､高血圧傾向の頭痛､めまい（図１．右）
など瘀血と気滞（ｷﾀｲ）による症状に用いられています。　

３．通導散（ﾂｳﾄﾞｳｻﾝ）の配合生薬

　通導散（ﾂｳﾄﾞｳｻﾝ）の配合生薬を図２に示しました。

　通導散は、
　・基本骨格は、便秘を軽減する大承気湯（ﾀﾞｲｼﾞｮｳｷﾄｳ：図２中段の４生薬）です。
　・さらに厚朴（ｺｳﾎﾞｸ）や枳実（ｷｼﾞﾂ）や陳皮（ﾁﾝﾋﾟ）は、抑うつ感､不安や
　　　心窩部や腹部の膨満感を軽減する理気薬（ﾘｷﾔｸ）です。
　・当帰（ﾄｳｷ）､紅花（ｺｳｶ）､蘇木（ｿﾎﾞｸ）と大黄（ﾀﾞｲｵｳ）は、瘀血による
　　　腰痛や更年期症状を軽減する活血薬（ｶｯｹﾂﾔｸ）です。

　通導散と関連する漢方薬名の意味：大承気湯も参照してください。

　蘇木（ｿﾎﾞｸ）は、中国南部やベトナムなどに成育するマメ科の樹木の材から調製される活血薬です（図３）。
　蘇木は利水薬（ﾘｽｲﾔｸ）の木通（ﾓｸﾂｳ）と共に打撲による内出血や痛みや腫れの軽減に寄与します。

４．通導散の関連方剤・・・桃核承気湯（ﾄｳｶｸｼﾞｮｳｷﾄｳ）

　桃核承気湯（ﾄｳｶｸｼﾞｮｳｷﾄｳ）は、調胃承気湯（ﾁｮｳｲｼﾞｮｳｷﾄｳ：甘草 ｶﾝｿﾞｳ､大黄 ﾀﾞｲｵｳ､芒硝 ﾎﾞｳｼｮｳ）に桂皮（ｹｲﾋ）と桃仁（ﾄｳﾆﾝ）を加味した活血瀉下剤です（図４）。

　本方は通導散と同様に婦人更年期障碍や生活習慣病に伴う頭痛やめまいに用いられます。本方は、桂皮（ｹｲﾋ）を含むことから、通導散の適応症状より、頭部や顔面の症状（冷えのぼせ､頭痛､いらだち）の顕著な状態に適します。