病気の悩みを漢方で

１．大承気湯（ﾀﾞｲｼﾞｮｳｷﾄｳ）の意味
･･･気を（下へ）受け入れる（巡らせる、送る）方剤

　大承気湯（ﾀﾞｲｼﾞｮｳｷﾄｳ）の承には承諾という言葉があるように、受け入れるという意味があります。
　そこで承気は、下降するべき気（ｷ：この場合は主に胃の機能）を（巡らせて）下へ受け入れる（送る）という薬能に由来します。

２．大承気湯 の適応･･･（体力に余力のある人の）腹部膨満感、便秘

　大承気湯（ﾀﾞｲｼﾞｮｳｷﾄｳ）は、消化管に停滞した内容物を下へ送り（大便として排泄する）方剤です。
　本方は腹部膨満感、腹痛、ガスが臭い、固く乾燥した便を伴う便秘に用いられてきました。
　さらに、承気は気を巡らせる理気（ﾘｷ）にも相当し、興奮、不安などの精神神経症状（気滞 ｷﾀｲ）の軽減にも寄与します。

３．大承気湯（ﾀﾞｲｼﾞｮｳｷﾄｳ）の配合生薬

　大承気湯は、大黄（ﾀﾞｲｵｳ）を含む瀉下剤（ｼｬｹﾞｻﾞｲ）です。配合４生薬を図１に示しました。

配合生薬の薬能は、
・厚朴（ｺｳﾎﾞｸ）と枳実（ｷｼﾞﾂ）は、腹部膨満感を軽減する理気薬（ﾘｷﾔｸ）、
・大黄（ﾀﾞｲｵｳ）は、腸管を刺激して便秘を解消する瀉下薬であり、のぼせ、
　　興奮などの熱証（ﾈﾂｼｮｳ）を冷ます清熱薬（ｾｲﾈﾂﾔｸ）、
・芒硝（ﾎﾞｳｼｮｳ）は、乾いて固くなった大腸内容物を潤して軟らかくして
　　排泄しやすくする塩類性の瀉下薬です。

　大承気湯の主要な配合生薬は、小承気湯（ｼｮｳｼﾞｮｳｷﾄｳ）を構成する３生薬です（図２）。
　この３生薬は気を巡らせる理気薬（ﾘｷﾔｸ）であり、腹部膨満感以外に興奮、怒り、不安などの精神神経症状などの気滞（ｷﾀｲ）を軽減します。

　図２の３生薬は、高齢者の乾燥したコロコロ便や腹部膨満感に用いられる潤腸湯（ｼﾞｭﾝﾁｮｳﾄｳ）や麻子仁丸（ﾏｼﾆﾝｶﾞﾝ）に含まれています。
　潤腸湯に関しては、漢方薬名の意味：潤腸湯を参照してください。また、便秘の漢方（４．高齢者の便秘）でも解説しています。

４．大承気湯 の関連方剤

　大承気湯の関連方剤（承気湯類）の配合生薬を図３にまとめました。

　通導散（ﾂｳﾄﾞｳｻﾝ）には、大承気湯の４生薬が含まれています。
　本方は蘇木（ｿﾎﾞｸ）のような活血薬（ｶｯｹﾂﾔｸ）を含み、桃核承気湯（ﾄｳｶｸｼﾞｮｳｷﾄｳ）と同様に肥満便秘傾向の婦人更年期に伴うのぼせ、不安、不眠などの精神神経症状に用いられます。